内視鏡検査 事ノ次第

一.外来受付で内視鏡予約の旨を告げる。病院の廊下には「鼻から入れる内視鏡内視鏡検査が楽になりました」のポスターあり。少しワクワクする。


二.名前を呼ばれて内視鏡検査準備室に誘導される。プライバシー保護のため番号で呼ぶ病院もあるらしいが、この病院はお年寄りが多いためか、看護婦さんが大声で名前を連呼しつつロビーを歩き回る。ある意味、潔し。


三.内視鏡検査室準備室に入るなり「すごい緊張してますか」と声を掛けられる。具合が悪くもないのに体調を心配されることが多々あるため、心配されるのには慣れっこ。前の検査が長引いているのか、多数の看護婦さんが所在なさげにウロウロしている。


四.「胃の泡を取る薬です。ガブガブ飲んでください」とコップを渡される。言われた通りガブガブ飲むと、ポカリスエットにバナナ味を加えて4倍ぐらい薄めた感じの味。味をどうにかしようとした努力は見られるが、まずい。


五.随分時間が経ってから内視鏡検査室から負けた感じの人が出てくる。不安倍増、ワクワク感半減。


六.「喉の麻酔です。ゼリー状なので喉のところに溜めて5分ぐらいそのままでお願いします。我慢できなかったら飲んでも良いですし、ティッシュに出しても良いです」とシロップのようなゼリーを渡される。言われた通り喉のところに溜めようとするが、存外難しい。舌の根がジワジワ麻痺してくるが、どうも喉ではないような気がする。どうにか喉に溜めようとするが、試行錯誤しながら時間切れ。「飲めたら飲んでください。飲めなかったら出しても良いですよ」と言われたが、出したら負けのような気がするので飲む。薬を喉に通して麻痺させようという意図もあり。


七.「胃の動きを止めるための筋肉注射をします。唾が出にくくなるためせきが出るかもしれません」と言われて注射される。先刻から唾が出てしかたなかったのが治まる。ナイス、注射。


八.内視鏡検査室に案内される。見た感じ内視鏡の線が太い。絶対に鼻用じゃない。ご丁寧に枕の横にマウスピースも置いてある。絶対に「鼻から入れる内視鏡」じゃない。


九.左を下にして膝を曲げて寝るように指示される。その他看護婦さんにいろいろおだてられながら準備を整える。「喉の麻酔のため、唾を飲み込もうとするとむせます。唾は口の横からそのまま流してください。また、力を入れると内視鏡が入らなくなるため肩と喉の力を抜いてください」と言われる。さっきから唾を平気で飲み込んでいるのだが、麻酔が効いていると飲み込めないらしい。へぇ。そうですか。麻酔が効いていると飲み込めませんか。


十.さっきから隅で端末をいじっていた人がやおら立ち上がり、内視鏡の線を持って「力抜いてくださいねー」と言う。あなたがお医者さんだったのね。


十一.マウスピースをかまされて口から内視鏡を挿入。やっぱり口ですか。「鼻から入れる内視鏡内視鏡検査が楽」になるらしいですよ。


十二.喉にズンズン突入してくる内視鏡のおかげで当たり前のようにえづくえづく。えづくと喉が内視鏡を押さえ込んでブロックするのが分かる。「オエッてしないでくださいねー。内視鏡が入りませんよー」とお医者さんが言う。分かるが無理だ。「鼻から息を吸って、口からゆっくり出してくださーい」と背中を擦りながら看護婦さんのアドバイス。ナイス、看護婦さん。でも無理だ。


十三.お医者さんが「十二指腸を撮りますからちょっとビックリしますよー」と言うか言わないかのうちに胃の底辺りに刺激あり。またえづく。ビックリしてもしなくてもえづくものはえづく。


十四.急に大きくゲップが出る。「ゲップを我慢してくださーい。胃を膨らましてシワシワをとらないと胃の中が撮れませんからねー」とお医者さん。膨らます前に言ってくれ。


十五.その後何とか「鼻から息を吸って、口からゆっくり出してくださーい」を体得してきてある程度こらえることができるようになったものの、胃が膨らんで「もうたまらん。もう我慢できん」となったところであれよあれよと内視鏡が引き抜かれる。


十六.結局、唾は全然流れなかった。注射がよく効いていたのか、喉の麻酔が全く効いていなかったのかのどちらか。看護婦さんに「上手に内視鏡飲めましたねぇ」とおだてられながら内視鏡検査室を負けた感じで後にする。若い人の方が反射が強いので辛いらしい。


今年、人間ドックの受診年なのだが、これをまたやるのかねぇ。
「鼻から入れる内視鏡」はどこ行った。